モノフィンの魅力

私が好きな物は、モノフィンです。モノフィンとの出会いは多分小さい頃にだと思いますが、小学校低学年の頃にどこの水族館かは忘れましたが、水族館で人魚のショーをやっていたのです。

大きな水槽の中を足ヒレを付けて、ゴーグルもタンクもつけないで、片手にホースだけ持って深い水槽を自由自在に泳ぐ女性のショーを見たのを覚えています。しかし、それは後から聞いた話なのですが酸素をうまくとれないという事で、数年後にショーは禁止となりどこに行っても見られなくなったそうです。

そんなことがあっても私の記憶の中には、もしも大人だったら「なんて神秘的で素敵なの。」という言葉が出来てもおかしくないくらいの大きなインパクト残して、深い記憶の底にのこりました。

そして大人になった時に、私はそのショーを見た事すら忘れていたのです。しかし、泳ぐ事は好きだったので、小さい頃から父に教えられていた素潜りはずっと続けていました。多分普通の人の、数倍は息が続き結構な深さまで、息継ぎ無しで潜れるようにはなっていました。

毎年毎年、両親と海に素潜りに出かけていた為に、クロールもまともに息継ぎ出来るような泳ぎが出来ない、にも関わらず深く潜る事だけは得意になっていました。とにかく深く潜る事が好きで、海の中で深く潜れば潜るほど音が無くなって行くかわりに、海の中の貝がカチカチ言う音や、魚が岩をつつく音などが聞こえてとても、心地いいのです。

それでも、潜れるのは息が続く程度の4.5Mでした。足の力が弱いので、水を掻く際に体力を消耗して、すぐに上がらずには居られなくなるのです。本当はもっともっと深く潜りたいのに、息が続かない事が本当に悔しくて、それでもそれを何とかするすべを、私はその当時知りませんでした。

 

ところが、ある日テレビをつけていると、グランブルーと言う映画の紹介がやっていました。それは本当に私には衝撃的な内容でした。完全なる素潜りで、何百Mも潜るのです。恐怖と死と隣合わせの内容に、恐ろしいほどの魅力を感じてしまいました。

そして、スキンダイブについて調べた所、興味深い名前が出てきました。モノフィンです。なんだろうと調べたら、それはスキューバーダイビングなどで使う足ヒレを一個にしたものまさに人魚のヒレのような道具だったのです。

しかし、私にはほど遠い世界の出来事のように思えて、縁のない物だと思っていました。

 

小学校低学年の頃に見た、人魚の女性は本当にあこがれの存在で、自分が足元に及ぶような存在ではないと思っていたのです。しかし、小さな憧れは心の奥底で沸々と小さな泉のように湧いていました。そして私が事務職について、毎日肩こりに悩まされるようになった頃に、プールに通う決心をしました。(夏は海に行っていたのですが、冬は海に行けないので)

一回500円のプール代も馬鹿にならないので、一か月に2回ほど行くようにしていました。そこでまさに運命の出会いをしました。それはまるで私をいざなうかのような状況で出会ったのです。

 

私は何度もプールに通ううちに、なんだか物足りなさを感じるようになっていました。プールでは潜水が禁止されていて、潜る事が出来ないのが本当にうっとうしくて、イライラし始めたのです。そんな自分でも訳のわからないイライラを抱えていたので、潜って解消していたら隣のレーンをなんとあのモノフィンで泳いでいる人が居るのです!!

私自身、目を疑って見ました。

 

まさかこんな田舎のプールでこんな特殊な物を使った人が泳いでいるなんて、想像もしなかったからです。しかも、憧れのモノフィン。水から顔をあげてしまうと足元が見えないので、モノフィンを誰が使っているかはわかりませんでしたが、プールの予定をネットで見た所、モノフィンのアジア大会なるものが行われると書かれていました。

私はびっくりしました。その人たちはモノフィンの大会に出る強化選手だったのです。

 

そして尚且つその泳ぎに、私はウットリしてしまいました。水中で見るモノフィンの泳ぎは、まさにイルカや人魚そのものなのです。なんと美しいのだろうと、私は潜ったまま黙って、正に息を殺して、泳ぐ姿を眺めていました。女性の泳ぎはまさに、人魚で男性の泳ぎはまるでシャチのような力強さと、モノフィンを上下に動かした後に出る泡の美しさは本当に見とれてしまうほどに美しかったのです。

 

何度となく監視員に怒られながらも、潜って見つめ続けました。しかし、その日はただただ見つめるだけで、一日が終わってしまいました。しかしそれからは、ひたすらモノフィンの美しさを頭の中で反芻する日々が続きました。

 

次第に自分もやりたいという欲求にあらがえなくなってきたのです。そしてとうとうその日が来ました。それはやはりプール通いをしていたある日の事、プールの受付のホールで、なにかの受付しているのです。なんだろうとみていると、なんとモノフィンをたくさん抱えている人が、受付をしていて私はビックリしました。もういてもたってもいられずに、その人に聞きました。

 

「何のクラブですか?」すると「フィンで泳ぐクラブです。」と教えられて「モノフィンは使いますか?」と聞くと「はい。」と言う返事が帰って来たのです。私は本当に嬉しくて、すぐに入会しました。そしていきなりモノフィンに触れる事が出来たのです。ところが、こんなに大変だとは想像以上でした。

自分の足に合ったモノフィンを履いて、あまりの感動にいきなり泳いでみたものの、あまりのハードさに泳ぎながら気を失いかけました。クラブの人が助けてくれなければ、私は嬉しさのあまり気絶しつつ溺れ死んでいたでしょう。

泳げたのはたったの25M。それでもクラブの人は、今までいきなり25M泳げた人は初めて見たと、言われました。クラブのコーチは私に向いているから、強化選手になれといいましたが、私は断りました。

私は競い合うよりもモノフィンを楽しみたかったのです。それに強化選手になると、毎日練習に来なければいけないし、大会にも出ないといけないと言われたのです。

そんなお金は無いし、一般人の私には無理なので断りました。それでもモノフィンだけは教わりたくて、一か月に2回ほどでしたが一生懸命通いました。

 

しかし、採算が取れなかったのか、残念な事に途中でそのクラブは消滅してしまいました。しかし諦めきれなかった私は、色々なクラブを探してとうとうまたモノフィンが出来るクラブを見つけて、そこに申し込んだのです。

 

それからは毎年冬になるたびに、そのクラブでモノフィンを楽しんでいます。そして夏はというと、とうとうマイモノフィンをネットで海で泳ぐのに適したソフトタイプの物を購入して、もう数十年使っています。

 

私がワーキングホリデーに行った時も、その国にモノフィンを持っていってあちこちのプールや海で使いました。もうモノフィンも先っぽがかけていますが、同じものが購入できないのでテープで補強して使っています。

 

海でモノフィンを使って驚いたのは、とうとう10Mまで素潜り出来るようになった事です。何しろモノフィンを使うと、水中でのスピードが信じられないほど早いのです。なので息の続く限り潜るとあっという間に、岩場なら海底に届いてしまうのです。おかげで耳抜きという、潜水に必要な技術も学べて、海の素潜りも大満喫しています。

 

一番のお気に入りは小魚と同じ速度で泳げるので、一緒に泳ぐと小魚が停まって見えるのです。沢山魚を観察出来て、本当に幸せです。しかし、不満を言うなら、もう何十年もモノフィンをしていて大好きなのに、同じような趣味を持った人が県に居ない事です。いつか同じようにモノフィン好きな仲間と、モノフィンを楽しめる日が来る事を楽しみにモノフィンを続けて行きたいと思う今日この頃です。